2000年4月の地平線報告会レポート


●地平線通信244より

報告会レポート・244
カワイソーの裏側
江本嘉伸
2000.4.28(金) アジア会館

▼モンゴルの報告が地平線会議では4回目となった江本さん。1987年に初めて訪れて、それから22回のモンゴル行をかぞえる。草原に遊牧民の国モンゴルというのが私たちが普段描くイメージだが、この10数年あまりで国政はガラリと変わった。社会主義の崩壊である。「モンゴル人はアメリカに憧れていますね」今まで知らなかった豊かな自由な生活が、モンゴルの人々の意識をかえていった。

▼都市の建築ラッシュ。何でも市場主義で物をお金に換算して売ってしまう人間のはかなさ。今までの心の豊かさ、すなわち旅人をもてなす心というものが民主化のおかげでうすらいできているようだ。たとえばゲル(遊牧民の住居)に招待するのも本当に素直な気持ちからであったが、今や食堂をやっているゲルが軒を連ね、旅人からお金を取る。もてなしの心が今やお金に換算していくら…と、当たり前になりつつあるのである。

小さいことかもしれないが、そういった民主化のマイナス要因が今回のゾドと呼ばれる雪害をひどくしたとも語った。民主化によって国のものから個人のものとなった家畜が180万頭死んだのだ。「社会主義の頃は9〜10月に草刈り隊の若者がトラックに大勢のって草原を走っていったものだ」政府は年間目標100万トンの“備え”として対策に万全だったのだ。もしこの備えがあれば、ここまで被害が広がらなかったのはいうまでもない。江本さんが倒れている家畜をみて、「さわるとまだあったかいんだよね」といった。「何とかしたい、ここにエサの草があれば助かるのだが…」と何度も悔しい気持ちに襲われたそうだ。

▼今まで例をみないゾドだが、日本の援助も多額なものになった。モンゴル政府から遊牧民にちゃんと援助がゆき届くかどうか、はっきりいってそれはほとんどないそうだ。やみくもな援助はどこでどうなるのか、しかしモンゴル自身がどこかで潤うからよいのでは、意見はいろいろある。もらったお金をどう使おうが関係ないと、モンゴル側の声もきこえてきそうだ。これからの国際援助のしくみを問われる話ともなった。

▼後半、江本さんは遊牧民のコスチュームで話を進めてくれ、羊のスモーク(骨付き)を客席のみなさんと回し喰いのおまけ付き。モンゴルを舌で感じた一瞬だった。またスライドの中にはグレートジャーニー敢行中の関野吉晴さんの姿もあった。[瀬口聡]


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