2004年8月の地平線報告会レポート



●地平線通信298より

先月の報告会から(報告会レポート・301)
地平線大秘宝物語!!
江本嘉伸
2004.8.27(金) 新宿区榎町地域センター

◆冒頭、江本さんがこれまで25回も通い詰め、そこで常に着用していたというモンゴルの民族衣装を着だした。長いあわせのような上着“デール”に細長い帯“ブス”を巻く。そして頭には毛皮の帽子。「あちらではこれを着てるほうが自然な感じ」という江本さんの姿は、確かにやけに似合っていた。

◆早速その恰好で、取り出したのがガラン、ガランと鳴るカウベル。そこからチベットで大活躍の動物、ヤクの話に入った。場内は暗くなり、高原のヤクの群れが映し出される。荷物運びだけでなく、万能な動物という。まずは、もちろん乳。そしてヤクの毛。これはなんと編んでテントに使われる。次に糞。乾燥させるとそれはそれはよく燃える。そう、燃料となるのだ。日本では糞を見つけると、ウベッ!と思う人が多いと思うが、モンゴルではまさしくウホッ!なのだそうだ。

◆そしてヤクの役割をもう一つ。大麦の脱穀である。チベットで欠かせない主食ツァンパをつくるための最初の作業、脱穀をヤクがするのだ。その後女性が大きな篩(ふるい)でより分け、鉄鍋で炒り、石臼で引く。コワという珍しい皮舟もスライドに登場した。ヤク5、6頭の皮でつくるそうだ。何ともヤクは役に立つ(笑)

◆東チベットのスライドの中に、日本の農村に似た家が現れた。いろりがあって、薪を使う。炭焼き釜もある。チベットはどうも遊牧民だけのように見られがちではあるが、実際は農業経済が主力、という話に意表をつかれた。

◆小さな石が持ち出された。エベレスト頂上の石。ここで、話はヒマラヤに展開した。「今年エベレストに登った人は何人か知ってる?」と質問。「今年は330人くらい、累計で2300人以上になる」と江本さんが話すと会場がどよめいた。そのことが少なからず山にも影響しているそうだ。「地球温暖化のせいで、氷河も付近のセラック(氷の塔)も小さくなっていっている」

◆アムド(中国では青海省)と呼ばれる地にある黄河源流で採取した源泉の水が披露され、話はモンゴルへと移る。取り出した秘蔵品は、競馬の時、膨大な汗をかく馬の汗取り棒、そしてモンゴル人が旅人を見送る時に乳をふり撒くへら。見ただけでは用途のわからない品々だ。両方とも、いただきモノであるそうだが、だからこそ沢山の思いが詰まっているのだろう。旅人を見送る道具には馬、らくだ、羊、ヤギ…日本の十二支と動物は多少違えど、ちゃんと12の動物が描かれていた。

◆モンゴルといえば、“ナーダム”。家族上げての戦いで、競馬、相撲、弓と三種類ある。競馬に関しては、600〜800頭くらいの馬が、長いのは30kmレースから短いのは18kmレースで戦うという。6歳〜12歳くらいまでの子供が騎手だ。

◆最後に出てきたのは数々のナイフだった。国々によって、大きさも形も違う。日本では、ナイフは危険なものとして扱われているのだが、本来は「とっても大事なもの」であるという。食べるためにも生きるためにもなくてはならないもの。だからこそ、その地域、その時代に応じて、いろいろな形に形成されるのだ。

◆「品物からどれだけ文化を語れるか」をテーマに次々に出てくる秘蔵品とスライド。考えさせられる「自慢」であった。

◆後半は意外な形でスターと。それは地平線では有名な賀曽利氏の一言から始まった。「実は数日前まで青森にいたのだけど、地平線でオークションをやるということで、私もそれは出品しなくては、と思い、バイクで駆けつけた。」なんと今日の日をオークションと思い込んで、せっせと品を探し出し、持ち込んでくれていたのだった。

◆そういうことで、オークション会場に早代わりした。賀曽利さんのユーラシア横断の際の記念のヘルメットを自転車野郎の安東さんが5000円で落札すると、安東さんシベリア横断の時の唯一のムダであった(安東さんはチャリ旅の時、紙一枚たりともムダどう思うモノを持っていかない)、ハーモニカを江本さんが1500円でゲット。

◆次に出てきたのは三輪さんがエクアドルの海岸で拾ってきたという、恐竜らしき大動物の大たい骨。これはオークション?いやいや、これはさすがに違った。ズシンと重いお土産をリュックに背負ってきた三輪さんは博物館に持っていき、聞いてみると「こんなもの持ってきちゃだめ」と言われたそうだ。さて、インドのサリーを持ってきて、サリー着方講座をしたのは今日の司会の藤原和枝さんだ。どんなに太っていても痩せていても誰でも着られるサリーの、インドでの使い方を紹介し、ついでにインド人にとっての楽しみであるアクセサリー、おでこにつけるビンディーや天然染料で作られているへナを紹介した。

◆長野亮之介画伯は、20年くらい前にアラスカで川下りをした時に拾った「西部開拓時代のものかも?」という蹄鉄を持ってきていた。形の「U」の上から幸せが入ってくるということで、自宅の玄関に守り神として飾っていたという。

◆坪井伸吾さんは19年前始めてバイクでアメリカを横断した時に着ていた自分の決意入りのジャケットを紹介し、石川直樹さんはグリーンランドに住んでいる女性の方にいただいたという白熊の人形を紹介し、白根全さんは南極大陸から持ってきた「1500年くらい前のコケ」を保存していると自慢をし、江本さんは東京五輪の際の1000円メダルを自慢した。とってもいい自慢大会だった。

◆そして、香川澄雄さんは今年のトランスアメリカのサポートをつとめた際の帽子と、なんと200回記念で作った地平線会議のオリジナルTシャツをオークションに出してくれ、極めつけは北朝鮮に詳しいナゾめいた魅惑の人物、満州氏がテポドン1号を打ち上げたときの記念切手と、ソウルオリンピックで柔道田村亮子に決勝戦で朝鮮の選手ケー・スンヒが勝ったときの記念切手と、イギリスのチャールズ皇太子が生まれた時に記念で作られた切手をオークションに出してくれた。

◆あっという間に時間が過ぎ、最後に、地平線初期に報告されたという北海道在住の西川栄明さんが、当時の思いを語ってくれた。何年たっても帰ってくればすぐ仲間になれる場所があるというのはなんとも素晴らしい。

◆ワイワイいろんな人が交代で主役になった今回の地平線。300回記念を目前にして、みんなの気持ちが歴史の振り返りと共に盛り上がっていっているのだろう。さて、11月7日が楽しみだ。[鈴木博子 愛知県から地平線に通勤中の健脚娘]


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