2002年12月の地平線報告会レポート



●地平線通信278より
先月の報告会から(報告会レポート・279)
東北アジアの森の民
田口洋美
2002.12.27(金) 牛込箪笥区民センター

◆前日まで諦めていたのだが、深夜になって、ふいに東京行きを決意、仙台の職場から報告会に直行した。20分遅れで会場に入れた。地下鉄の階段を一段飛ばしに来た身に、暑すぎる暖房。汗が吹き出すけれど、スライドに映し出されているのは、厳寒の世界だ。

◆北緯70〜65、凍てつく大地。凍った川にいくつもの穴を開け、網を入れて魚を獲る。大変な労力をかけた割に、ほんの少しの魚しか得られないが、生の魚からビタミンをとるためなのだという。北緯50〜45の沿海州。そして日本へと、北方民族の狩の文化は「のどちんこがたれるように」のびているという。トナカイを使った猟や、各地の罠がスライドで紹介されていく。罠の作りは、遠く離れた地でありながら、驚くほど共通している。

◆日本のマタギ文化の紹介に入ると、山形出身、在住の私になじみの山の写真、なじみの地名が出て来て、なんだか単純に喜んでしまう。各地にマタギ集団がいたのは知っていたが、秋田のマタギが新潟県秋山郷まで出稼ぎに行っていたというのは知らなかった。そのルートにある山里に罠などの文化も伝わったのだろう。

◆休憩をはさみ、第二部は賀曾利隆さんも加わり、二人の熱弁の応酬。クマ猟について熱く語る田口さんに、賀曽利さんから「なんで西のイノシシもやらないのか」とつっこみが入った。西は遠いだの、西は荒くて閉鎖的などと田口さんが理由を挙げるが、賀曽利さんは納得しない。さらなるつっこみに田口さんは「イノシシはおもしろくない」と。正解! 当人がなにをおもしろく思い、なにに惹かれるか、それは当人以外にわからない。どんなに過酷な世界でも、惹かれればどこまでも追いかけてゆく人に見える田口さんですから、先にあげた理由は理由になってませんね。

◆ああ、それにしても時間が足りない。ロシア狩猟採集民だけでも一回、日本のマタギの話だけでも三回くらい、それぞれにまとまった時間がほしいところ。毛皮は売れなくなり、猟師たちの高齢化も進んでいる。狩猟圧が減り、東北ではクマが増えている。しかし、山は自然林が伐採された後に餌がとれない杉が植林され、しかも手入れがされていないところが多い。餌が不足するから、クマはうろつく。そして、人は自然志向で山に入りこむ。事故が増えて当然か…

◆ロシアの狩猟採集民は、生計の道を断たれ、どうなってゆくのだろう。森にいれば、知恵と経験と技術で必要な物を手に入れることができるのに。そして、誰のものでもない森や大地は、誰が守るのだろう? 日本ではとっくに山での狩猟採集で暮しをたてることはできなくなっているが、季節ごとの山菜採り、山を駆けて獣を狩る楽しみは、お金を出しても買えないものではないかと思う。日本の山や海も、今後、面倒を見る人がいなくなることが大きな脅威になっていくという、田口さんの言葉をどう受けとめるか。開発と言う名の破壊と、自然保護という名の囲い込み。そんなものではなく、もともと日本人はもっと賢く自然を利用し、自然とともに生きてきたはずなのに…と思った。[月山依存症のOLで不良主婦?の 網谷由美子]


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