2004年3月の地平線報告会レポート



●地平線通信293より

先月の報告会から(報告会レポート・295)
キルギスのプライド
滝野澤優子・荒木健一郎
2004.3.26(金) 新宿区榎町地域センター

◆報告会の冒頭、賀曽利隆さんの元気な声が、日焼けしたひとりの青年を紹介した。このところの地平線通信に、日本縦断徒歩の旅の様子を現地から携帯メールで届けていた鰐淵渉さんだった。ゴールの日本最東端、納沙布岬に春分の日に到着し、その出で立ち−約30kgの荷物・服装−のまま現地から青春18キップを使って駆けつけてくれたのだ。

◆さて、真打ち登場。滝野澤優子さん、そしてだんなの“けんちゃん”こと荒木健一郎さんだ。それぞれの愛車(バイク)に跨がり、'01年7月に日本をスタート、フェリーでロシアに渡り、ユーラシア大陸横断、ヨーロッパ周遊、アフリカ大陸一周を成し遂げ、エジプトにバイクを預けてカルネ(バイクの通関書類)再申請のため日本に一時帰国中、という身である。

◆'98年2月に結婚し、これで落ち着くかな、と旅好きの優子さんは思ったそうだが、ロシアをサイドカーで往復横断したはるみさん&クルト夫妻の地平線報告会(注・2000年2月)で刺激され、さらに元々けんちゃんが仕事を辞めて旅をするとの計画を暖めており、それにも引っ張られて夫婦での旅が始まることになったのだ。

◆一見キビキビした優子さんが実はのんびり屋、ボーッとした雰囲気のけんちゃんが実はせっかちというこのコンビ、途中で別れるのでは…という周囲の心配をよそに、2年と8か月の間、夫婦旅を続けてきた。

◆さすがは長期に渡る大陸移動。スライドが進むにつれ、宗教や食などの文化、そして人種の変化が見てとれる。さらに、2人が進むと歴史も進む。旅の最中に米国で同時多発テロが発生した。その時いたのはウズベキスタンで、アフガンの隣町。危険度4となり、観光客はサッサと飛行機で脱出してしまった。が、バイク旅ではそうもいかず、そんな町に滞在せざるを得ない。その影響でトルクメニスタンのビザ取得も人数制限ができて苦労した。朗報もある。アンゴラの内戦が終結したのだ。おかげで近年不可能だった陸路でのアフリカ一周を達成することができた。

◆そんなスライドとトークの合間に、優子さんのテーマの1つである“犬”も映し出される。世界の犬をも撮り続けており、そのテーマで報告会を行なってもいい(犬好きの私は大賛成!)ほどだ。

◆元気よくバンザイポーズをとった2人のツーショットも時々挟む。笑顔が幸せを、旅の充実を物語る。が、無論トラブルだってある。カメルーンでは2人ともA型肝炎で1か月以上ダウンした。その原因は、マリのドゴンにて、女性は見ても写真も撮ってはいけないという神聖な行事に対し禁を犯してしまったからか、とは優子さんの推測。しかし、禍いを転じて福となす、でカメルーンの親切な日本大使館に療養中お世話になり、大使公邸に招かれたり、トンカツをごちそうしてもらったり、日本大使とは今でもメル友、という貴重な体験となった。そのような体験をたくさん積み重ねてきたバイク旅。しかし、バイクに固執せず、冬のヨーロッパでは1か月間シャモニーでスキー三昧、行ってみたかったマダガスカル島やザンジバル島へはバイクを置いて渡ったりと、臨機応変、自由気侭だ。

◆そんな長旅の100枚以上にも及ぶスライド上映。最後の写真はキョーレツだった。キリリと澄み渡る青空、そしてエジプトの象徴ピラミッドを後方に配し、全面にドーンとアップで写るのは、絶妙のタイミングであくびをしているラクダの横顔。パカッと開いた口がなんともユーモラスで、会場の一同は大笑い。写真家だったら、この一枚を撮るために今までの旅があった、というところか…。

◆この報告会の翌週に再びエジプトへと戻った2人。次はアジアへと、まだまだ旅は終わらない。[古山里美“旅する主婦ライダー”]

滝野澤優子さんのホームページ
http://www.mapple.net/touring/05special/world


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