97年9月の地平線報告会レポート




9月の報告会から
玉砕帝国解体新書
惠谷治
1997.9.30(火)/アジア会館

9月中旬に北朝鮮をまわった日本人が一部隠し取りで撮影したビデオを見ながらの報告でした。

◆第一部の現地ツアービデオ紹介が終わるとグッタリしていた。嘘のような現実と、〈偉大なる首領さま〉への賛辞に吐き気がするほど不快感が襲ってきた。休憩の時間になったときには積もり重なっていて一瞬立てなかったほどだった。

◆北朝鮮の現状を映し出すビデオには水害を受けているらしき村以外、差し障りないところだけ映っていた。ビデオを写した人はどんな人かは知らないが当局が管理する行程でスケジュールをこなしたのだろう。二度と使えない首領さまの坐った歯科用の椅子、市内に配置される綿菓子の屋台や公園のカップル、展示してるだけでほとんど買えないデパートに通らない自動車と画面に現れるものは空しさと嘘で塗り固められていた。学校へ行けば子供たちの歓迎が続く。楽器の演奏や舞踊、化学の実験。無理にやらされているなら一人ぐらい退屈そうなそぶりを見せそうなものだけど隙がまったくない。どの子もどの子も表情がなくてまるで人形のように見える。偉大なる首領さまへの賛辞が松島トモ子のような声の女子小学生から発せられたとき、「実はロボットが自動で話しているんじゃないか」と一瞬錯覚してしまったほどだ。

◆第二部は北朝鮮の体制について恵谷さんから解説が続いた。党が国を指導する体制だということ、金日成が死んで三年経つのに最高指導者が不在だということ。十月十日頃、息子の金正日が何らかのポストに就任するんじゃないかということなど。わかりやすい解説が続いて報告は終わりとなった。

◆ビデオの途中、高中小幼稚園の子供たちの人形のような姿に場内は何度か笑いに包まれた。目と鼻の先に未だに大日本帝国のような思考を持つ国があって、その国を背負う子供たちが人間性を失われてしまっているという絶望的な現実を突きつけられたのだ。みんな苦笑いするしかなかったのだと思う。[西牟田靖]




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