97年11月の地平線報告会レポート



11月の報告会から(地平線通信217より転載)
長い長いチャリンコ旅のおはなし
阪口恵美子
1997.11.28(金)/アジア会館

◆12年という長い年月に渡る旅など、そう耳にする話ではない。少女時代は無口でおとなしい性格だったという阪口エミコさんが、想像もつかない程のバイタリティを身につけたのは、賀曽利隆さんの著作「アフリカよ」に出会ったあとだった。

◆海外に出る前に、まず日本を自分の目で見て、感じて、理解しようと、750ccの大型バイクで10ヶ月に渡る日本一周を決行する。途中、台湾と120kmしか離れていない与那国島でボーダーを越える決意を新たにする。

◆600ccのバイクでオーストラリアに旅立つ。そこで出会ったサイクリストの「花を見た?」「道を横切る蟻を見た?」などの言葉が耳に残る。走り去る風景の中に見落としたものを、彼らは見て、感じていた事にショックを受け、バイクではなく、自転車での旅を考え始めていた。

◆この旅で出会ったオーストラリア人のスティーブン・シールさんも、彼女のバイタリティに影響され、途方もない計画と思える世界一周の旅へのパートナーとして、同行することとなる。

◆1990年初頭、MTBでの旅を開始。東南アジア、北中南米、アフリカ、南欧から西欧へと旅した彼女は、多くの試練を感じさせない程明るく、楽しげに記憶を辿らせる。交通事情の悪さで命の危険すら感じた中南米、道らしき道がないザイール横断、スペイン入国時のオーストラリア人へのビザ発行拒否、ガーナでのマラリア、16日間シャワーを浴びられなかったこと、西サハラの地雷地帯通過…。

◆男性と共に走ること、ましてや国籍も文化も言語も違う2人が、四六時中顔を突き合わすというのだから、ぶつからない訳がない。口論の最中、お互いが辞書片手に意味を確認しているうちに、いつの間にか熱も冷め、そのまま食事にでかけてしまうというエピソードは、旅のパートナーとして最適でもある事を教えてくれた。

◆エミコさん81,000km、スティーブさん101,000kmを走破し、あと4年。ヨーロッパ、ロシア、アジアなど、未解放地区を含むエリアを巡り、2001年に帰国予定。この模様は旅の資金ともなるサイクルスポーツ誌の不定期連載を通して見る事ができる。

◆移動性高気圧エミコ・スマイルはゆっくりとユーラシア大陸を迷走し、笑いと幸せを各地に振りまきつつ、再びこの報告会にやってくるだろう。[山上 修]



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