留守電を使ったテレフォンサービス
地平線放送

「地平線放送」は、当時まだオフィスで使われているだけだった留守番電話を使って、なにかテレフォンサービスのようなことができないか、というアイデアから生まれたプロジェクトです。日本全国、いや世界中から03-8XX-9918にダイヤルすれば、誰でも24時間、2分30秒の“番組”を聞くことができる!!! そんなコンセプトがとても斬新に感じられたようで、まだ年報『地平線から』の制作が軌道に乗ってなかった1年目から2年目にかけては、マスコミへの取材対応をはじめ、“地平線会議の顔”として大活躍したものです。

地平線報告会の直前には案内を流し、終わったあとは会場での録音した報告者の話を紹介する。旅から帰ったばかりの人やこれから出かける人をつかまえては、インタビューする。さらには、現地にテレコをもっていってもらい、実況録音をしてもらったり、民族音楽の紹介などをしてもらったりしました。わずか2分半に凝縮された報告者の生の声や現地録音ならではの臨場感が、たまらない魅力となっていたようです。

ところが、スタートして1年半が過ぎようとしていた頃、NHKの朝の番組で紹介された直後に、視聴者からの電話が殺到。おかげで局側の交換機が完全にダウンしてしまい、付近一帯の数万件の電話が不通になってしまいました。その後も、1時間のあいだに1000本以上のコールが続くという異常事態が続いたため、1時間に最大24回の着信しかできない2分半の番組をやめて、あえてつまらない30秒番組を流し、2度と聞いてみようと思わないようにしてもらおうという手段に出ました。

つまり、わざと「おもしろくないから、聞かないでください」という番組を作り続けるしかなかったわけです。おかげで、スタッフの士気はみるみるうちに低下し、9ヵ月後に電話機をはずしたあとは、細々と「地平線放送テープ」の制作を続けるだけになり、プロジェクトは自然消滅してしまいました。

こうしてマルチメディア時代を迎えてみると、「地平線放送」は時代を先取りするプロジェクトだったなという思いを強くしています。

No.001 第1回放送/試験放送 1979.9 Sound
Files
No.002 第1回報告会・ごあいさつ/宮本千晴・三輪主彦 1979.9
No.014 インド生録の旅−バラナシ/浅野哲哉 1980.1
No.048 チョモランマ・ノースコルから実況/江本嘉伸 1980.6

地平線放送全番組リスト


久島弘さんの手書き&手描きの労作(1980年に製作)
地平線放送の紹介のチラシ表面 裏面で地平線放送のさまざま番組内容を紹介


No.001 第1回放送(試験放送)
 こんにちは! ダイヤルしていただいてありがとう。こちらは地平線放送です。9月いっぱい試験放送をお送りしています。

 「地平線会議」っていう名前の会が、今月からスタートするんです。地平線会議っていうのは、探検や旅に夢をえがく仲間たちの参加自由の集まりです。やってみたいことがあったらどんどんやってみる遊びの場ですって。旅にかけた情熱を生かしたいと思う、そういう旅する仲間の集まりです。思いついたことはどんどんやっていくそうです。代表はいないみたい。

 そのかわり、9月の連絡事務局っていうのがあるんですね。みんなボランティアだから、持ち回りでいろんな仕事を分担していこうっていうようです。9月の連絡事務局は、賀曽利隆さん。電話は0463-XX-0144です。もう一度くり返します。0463-XX-0144、賀曽利隆さんです。

 とりあえずやることになっているプロジェクトを紺介します。毎月1回、旅から帰った人のスライドとお話の会を開きます。
 今月は、28日金曜日夕方7時から、三輪主彦さんのトルコ留学の報告です。奥さんと2人の子供を残して、8カ月間の待望の国費留学に出かけました。三輪さんは山男で、高校の地学の先生です。アンカラ大学は戒厳令がしかれたため閉鎖されていて、旅もたっぷりできたそうです。実は、私の高校時代の先生です。

 今回の報告会のために「かたこと・トルコ語修業」と「アナトリア通信」の2冊のレポートを用意してくれました。赤い表紙の手書きの本、「あむかす・旅のメモシリーズ」の553、554です。新宿紀伊国屋書店の旅行書売り場にも並んでいます。
 この会は、会費500円でどなたでも参加していただけます。9月28日金曜日7時から、場所はアジア会館です。地下鉄銀座線の青山一丁目で降りて、乃木坂の方向に5分ぐらいのところです。

 それから地平線会議では、探検や冒険の活動を記録していって、年間の活動をまとめます。
 この地平線放送でも、いろんなグループの活動や、本を書いたり映画を作った人の紹介、それから安チケットの情報なども、どんどんお伝えします。みなさんからのお便りをお待ちしていますね。

 10月からは、10日ごとに情報を中心にした放送を始めます。またダイヤルしてくださいね。わたくし、玲子です。またね!


No.002 第1回報告会・ごあいさつ/宮本千晴・三輪主彦
 こんにちは! こちらは地平線放送です。九月の集会の模様を、2分半だけお伝えします。最初は、世話人のひとり、宮本千晴さんのあいさつです。

宮本 民衆の認識のレベルっていうのは、マスコミのかたちで与えられることでは不十分だと思うんです。直接知っている、あるいは、少なくとも直接口をかわせる間柄の体験がかわされることで、はじめて心の中で積み重なりうるんではないか、と思うわけです。

 そういうようなことを多少なりともなめらかに進めるために、どういう仕組みがいいんだろうか? いい知恵はたいして出ないんですが、どこかで誰かが、パイプのジョイントの役を果たすことをやっていつづけていれば、それでいいのである。それぞれそうやって勝手に歩きまわったことの尻尾が、どこかでつかめるようにしておきたい。何の誰兵衛が、いつ、どこそこへ行って、どういうことをしました、というごく簡単な記録の積み重ねを残しておきたい。そう考えて、みなさんに声をかけてみようではないか、ということになったんです。

三輪 先程、宮本さんがいろいろお話しになってたわけですけど、ぼくはトルコから帰ってきまして、しばらくしてうろうろしておりますと、宮本さんが「三輪、おまえスライドをどこかでやらせてやるから、せひスライドを持ってこい」ということを言われました。「アジア会館という所でやらせてやるから、1万円だぞ」というわけですから、1万円ももらえてスライドをやらせてもらえるなんて、こんなすばらしいことはないな。とにかく、ぼくもしゃべってみたいという気はありましたから……、1万円もらえるんだったらこれはすばらしい、と思いまして、「じゃ、やります」と言ったところ、しばらくして、「おい、早く1万円払え!」(笑い)。ぼくはもらえるもんだとばっかり思ってたんですけど、そしたら、「1万円払えば、しゃべらせてやる…」(笑い)。でも、乗りかかったことで、1万円を出して、それてしゃべらさせていただいています。

来週またダイヤルしてください。さようなら。


No.014 「インド生録の旅」から…バラナシ/浅野哲哉
 こんにちは! こちら、地平線放送です。浅野哲哉さんの「インド生録の旅」の1コマをお楽しみください。

浅野 えー、ただいま11月11日、ちょうど6時です。朝6時です。いま僕は、ガート(沐浴場)を見下ろす、ちょっと高い所にいます。目の前に……まだ日は昇っていません。……ガンガ(ガンジス)の向こう岸は、何もない荒れ地です。ガンガの水面が白く光って、空には雲ひとつありません。さっきまで見えていた明けの明星、金星は、しだいに朝日に、太陽の光に消されて……、もうすぐだと思います。もうすぐ日の出だと思います。鳥がたくさん飛んでいます。

浅野 ……えー、ただいま6時25分……。
インド人のあんちゃん ディデュゴルピ?(Did you 5 Rupees ?)
浅野 えっ?
あんちゃん ディデュゴルピ?(“Did you 5 Rupees ?”:つまり、さっきから5ルピーでボートに乗らないかとしつこく誘っている。ゴ=5=日本語)
浅野 うるさいな!
あんちゃん ディディゴダラー?(ゴダラー=5ドル。5ドルならどうか?)
浅野 やあ、……要らない!
あんちゃん ディディゴダラー? OK? OK?
浅野 (無視して)えー、さきほど、5分ぐらい前に、ついに日が昇り、真っ赤な太陽が昇りだしました。日が昇ったとたんに、えー、ジャパニ(日本人)、ジャパニと……。
あんちゃん ジャパーニ、ジャパーニ、ジャパーニ、ジャパーニ……。
浅野 うるさいですよ!!! ちょっと静かにして! 静かにしててくださいよ!(ところがまったく効き目なし。なにやら叫んでいるが、聞き取れない)
あんちゃん チンコダーラ、チンコダーラ……。(チンコ=○○○。つまり○○○がだらーりとしている、の意? 誰が教えたんだ^_^;)
別の声 ガラハディ。(???)
浅野 ぜんぜんわかりませんけどねぇ、僕は……。
あんちゃん コンニチーワ、コンニチーワ。
浅野 とにかく、やっとまた……。
あんちゃん ヤットー、ヤット・ボーク……。(「やっと」と「僕」、の真似か?)
浅野 うるさいな! ほんとに……。あの……騒がしいバラナシの……。
あんちゃん バラナシ。
浅野 うん、バラナシの1日が始まるみたいですね。
別の声 △※○☆◎#◇*□……バラナシ……。
あんちゃん バラナーシ。グット・プレイシーズ!(Good Places)
浅野 イエース! ボホト・アッチャー。(大変良い、というヒンディ語)
あんちゃん ボホト・アッチャー! タンキュー、タンキュー……」(タンキュー=サンキュー)
浅野 せっかくロマンチックな気分でいたのに、こういう悪い連中がいるから、もうだめなんですよね。どうも。それでは、また会いましょう。さよなら。ナマステ。
あんちゃん サヨナーラー。コンチワ!……


No.048 チョモランマ・ノースコルから実況/江本嘉伸
こんにちは! 地平線放送です。今月、6月の報告会は、27日の金曜日午後6時半から、いつものとおりアジア会館でおこないます。報告者は、日本山岳会のチョモランマ登山隊に参加し、つい最近中国からお帰りになった江本嘉伸さんです。江本さんは、東京外語大学山岳部のOBで、75年には、ネパール側からのエベレスト登山にも参加しています。

 ここでちょっと、江本さん自身の声を、チョモランマのノースコル、7007mからの実況録音で聞いてみてください。

江本 (ビュービューと風の音)えーと、ただいまノースコル。7007メートルのテント場です。えー、北壁の、目の前の壮大な眺めを前にしてぶっ立っています。えー、真下にA.B.C.(Attack Base Camp)、北壁のA.B.C.が見えて、私はいま、オレンジ色のノースコルのテントに立っています。
 えー(激しい息づかい)……今日は快晴。雲がちょっとありますけれど、風がほとんどない。7007メートルのノースコルにしては、ほんとにおだやかな日差しです。
 時間は午後5時。えー、ちょっと遅いみたいですけれども、8時までは日が差しておりますから、これから北東稜のA.B.C.に降りましても、まだじゅうぶん時間はあります(ギュッ、ギュッと雪を踏みしめる音……)。

 チョモランマ登山だけではなく、これまで外部にほとんど知られていなかった、チベット奥地の様子も紹介してくださるそうです。
 それから、今月の報告者を、シルクロードを歩いている写真家、陳立人さんと一部に発表してしまいましたが、陳さんの仕事の都合で、夏以降に延期することになりました。
 それでは、27日金曜日、6時半、アジア会館でお会いしましょう。


Sawari from the Chiheisen Hosou

No.001:第1回放送/試験放送(1979.9)
hoso001.au/187K


No.002:第1回報告会・ごあいさつ/三輪主彦(1979.9)
hosomiwa.au/242K


No.014:インド生録の旅−バラナシ/浅野哲哉(1980.1)
hosoasan.au/264K


No.048:チョモランマ・ノースコルから実況/江本嘉伸(1980.6)
hosoemot.au/253K



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